ー意義ー
ライフセービングは、他人に勝つことではなく、最も迅速で確実に溺者を救助することをゴールとするという事である。オーシャン競技は海で行い、波の高さ、潮の速さ、風の強さや向き、天候などが不安定な自然環境のためタイムを測らない。一方、プール競技では、タイムを測るため0.01秒を争う。反則はライフセービング活動と同様に、あり得ない状況は失格
ー基本ー
ライフセービングの訓練・技術をスポーツ化させたものが、ライフセービング競技である。
ライフセービング競技には、様々な種類がある。
サーフ種目・ビーチ種目・プール球技・SERCなどがある。
ー歴史ー
1908年にサーフカーニバルと呼ばれる大会がオーストラリアで開催された。
その後、世界各地に広がり、サーフカーニバルと称されるライフセービング大会が各地で行われている。1920〜1974年にかけて徐々に競技種目が加えられてきた。1985年からオーストラリアでプロ競技会が開催される。1993年に国際ライフセービング連盟(ILS)が発足され、1994年から2年ごとにライフセービング世界選手権(RESCUE)を開催している。
日本では1975年に鎌倉で湘南指導員協会主催による第1回ライフガード大会が開かれた。現在は全日本ライフセービング選手権と名称を変え、2007年に第33回を迎えている。
<それぞれの種目について>
〜サーフ種目〜
- アイアンマンレース
- 水中からスタートし、沖合いにあるブイまでスイム(水泳)・パドルボード・サーフスキー3種類での往復を一人でこなすトライアスロン。種目間を移動するときは走らなければならない。「鉄人レース」の名のとおり、スタート直後の心拍数が180近くまで上がるという最も過酷な競技であるとともに、最も盛り上がる花形競技である。勝者には「ミスター・ライフセーバー」の称号が与えられる。3種目の順番はくじ引きで決められる。
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- (パドルボード:ロングサーフボードに似たレスキューボードを競技用に軽くしたもの。)
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- サーフスキー・レース
- かつて救助に用いられていたサーフスキーによるレース。250m沖のブイを迂回して戻って来る事で競う。
- スタート地点とゴールが水際である点が他の競技と違う。
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(サーフスキー:約6メートルの細いカヤック状の乗りもの。)
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- タップリン・リレー
- タップリン(Taplin)は考案者の名前に由来している。アイアンマンレースと同じコースを、スイム・パドルボード・サーフスキーの各種目を3人で受け持ちリレーを行う。3種目の順番はくじ引きで決める。
- アイアンマンレースに次いで人気のある競技。
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- パドルボード・レース
- 計800mのコースをパドルボードで競う。パドリングの速度はもちろん、沖に出るのに波にぶつかっていくか反転してやりすごすかを見極めたり、直線で向かわず最大限に波を利用するポイントから入っていくなど実用的な技術が問われる競技。
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- ラン・スイム・ラン
- 文字通り、走って、泳いでまた走る。陸上を溺者に最も近い位置まで走り、泳いで溺者を救助した後、陸上に引き上げるという救助活動を模したもの。ライフセーバーが日頃から行っている基礎トレーニングの手法であるが、競技においては海岸200mを走り、120m沖のブイ間で泳ぎ、さらに7連ブイのある142mと迂回して浜に戻りまた200m走りゴールする。苛酷な競技の一つである。
- (7連ブイ:7つに連なるブイ)
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- レスキューチューブ・レース
- レスキューチューブ技術を争う競技。4人1チームで、1人が溺者として沖に待機し、1人が救助者、残る2人が救助サポートをする。溺者は沖でヘルプの合図を出す。救助者はレスキューチューブとフィンを装着して救助に向かい、サポート役の2人にアシストを頼む合図を送り、溺者をチューブで巻き、浜まで泳いで引っ張っていく。波打ちぎわでサポート役2名が溺者を引き上げゴールラインまで運ぶ。
- (レスキューチューブ:溺者を搬送するためのもの。大人が2人つかまっても沈まない素材を使用し、潮の流れが速い海でも、確実に溺者を確保し搬送することが出来る。また、ライフガードチューブとも呼ばれている。)
- レスキューボード・レスキューレース
- レスキューボードでの救助技術を争う競技。2人1組で、溺者役の1人が沖まで泳ぎ、もう一人が救助に向かう。2人でパドリングして戻ってくる。スタート地点は浜だが、ゴールは指定された波打ち際である。救助者役の選手は、溺者として沖にいる選手の「助けてサイン」を確認してから救助をスタートする。
- 〜ビーチ種目〜
- ビーチ・スプリント
- 砂浜90mを走る競技。砂浜という環境なので、瞬発力より慣れがものをいう競技と言われている。
- また海岸によって砂の質が異なるため、砂質に合った走りが要求される競技である。
- (スプリント:短距離走)
- ビーチフラッグス
- 日本で最も親しみ深い競技。競技者は目標とは反対側にうつ伏せになり、かかとを揃え両手をあごの下に置いて待機。スタートの合図で飛び起きて20m先のフラッグまで全力疾走、飛び込んで取る。
- フラッグの数は競技者の人数より一本少なく、取れなかった者から脱落する(椅子取りゲームみたいなもの)。待機していて沖にいる溺者を発見した際、直ちに後方の監視塔にある救命器材を選んで溺者へ直行するという状況を競技にしたものである。
- ビーチ・リレー
- ビーチ・スプリントと同じ90mのコースを4人でリレーするもの。
- 直線コースであるため、向かい合ってすれ違う際にバトンを渡す。
- 2kmビーチ・ラン
- 海岸に立てられた500m間隔の旗を4往復する長距離種目。
- CPR(心肺蘇生法)コンテスト
- 1人あるいは2人1組でレサシ・アンを用いてCPRを行う。3分間で技術の速度と正確さを競う。
- CPRはライフセーバー全員が取得すべきスキルであるため、CPRコンテスト出場選手は主催側が当日ランダムで選ぶ。
- (レサ・シアン:結果が電子回路により記録・出力出来る心肺蘇生法の訓練用人形)
- 〜プール競技〜
- 障害物スイム
- 水深70センチの所にネットを2箇所に張り、その下を潜って200m自由形で泳ぐ。
- 障害物リレー
- 障害物スイムと同じコースを、50mずつ4人1組でリレーをする。
- スーパーライフセーバー
- 最も過酷なプール競技。75m泳ぎ、底にあるマネキン人形を引き上げて25m泳いだ後マネキンを放す。その5m以内でフィンとレスキューチューブを付け50m泳ぐ。今度はマネキンを受け取って5m以内で腕の下にレスキューチューブを付けゴールまで運ぶ。計200m泳ぐ。
- (マネキン:溺者の変わりのマネキン人形。重さは約4kgが、水が入ると約40kgになる。自力で浮くことができない小柄な成人女性の重さに想定されている。)
- マネキン・キャリー (Mannequin Carry)
- 自由形で25m泳ぎ、底にあるマネキンを引き上げ、残り25mはマネキンを抱えて泳ぐ。計50m。
- マネキン・キャリー・ウィズフィン (Mannequin Carry with Fin)
- フィンを付け自由形で50m泳ぐ。底にあるマネキンを引き上げ、残り50mはマネキンを抱えて泳ぐ。計100m。
- マネキン・トウ・ウィズフィン (Mannequin Tow with Fin)
- マネキン・キャリー・ウィズフィンにレスキューチューブを付け50m泳ぐ。マネキンを受け取って5m以内に腕の下にレスキューチューブをつけ、引っ張って泳ぐ。計100m。
- マネキン・リレー
- 4人が1チームとなり、25mずつ泳ぎながらマネキンを運びリレーをする。救助者の体力が尽きそうになった時に、他の救助者達が作業を引き継ぐ場合を想定した競技。
- メドレーリレー
- 4人のメドレー競技。第一泳者が自由形で50m泳ぎ、第二泳者はフィンを付けて50m泳ぐ。第三泳者はフィンを付けずレスキューチューブを肩にかけて50m泳いだ後、第四泳者はフィンを付けてレスキューチューブをかつぎ、それに第三泳者が両手でつかまり二人で50m泳ぐ。
- ライン・スロー (Line Throw)
- プールサイドから12メートル先にいる溺者にスローライン(ロープ)を投げて、30秒以内に救助する競技。何度投げてもよいが、30秒以内に救助できなければ失格となる。
- レスキューメドレー
- 個人競技。自由形で50mを泳いだあと、男子20m・女子15mの潜水で底にあるマネキンを引き上げ
- る。マネキンを抱えて男子30m・女子35m泳ぐ。
〜SERC〜
シミュレーション・エマージェンシー・レスキュー(SER―緊急対応演習)競技
- 4人で1チームを構成し、競技前にロックアップエリア(Lock-u
- p area)と呼ばれる場所に隔離されプールで何が起こっているのかは見聞きできない。プールには泳力がある者ない者、意識がある者ない者といった様々な溺者、負傷者、病気になった者などを演じる人間やマネキンが配置される。競技者はスタートの合図でプールに誘導され、発見順にあらかじめ備えられた器材のみを使って、それぞれの状況に応じた救助や応急手当てのシミュレーションを行う。競技時間は1分30秒から2分。正確さと速さが審査される。